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ViVa! ムービーレビュー
エメラルド・カウボーイ
エメラルドに夢を求めて、コロンビアへ移住。「エメラルド王」と呼ばれるまでになった日本人,早田英志の半生を描く。作り物のアクション映画よりも緊迫感あふれる、異色のドキュメンタリー(原題:ESMERALDERO/EMERALD
COWBOY)。
南米コロンビアの首都ボゴタの北方には、ムッソー、チボール、コスクエスなどのエメラルド鉱山が広がる。これらは世界有数のエメラルドの産出地である。ここでエメラルド原石を売買する者たちは、泣く子も黙る「エスメラルデーロ(Esmeraldero)」と呼ばれる。カウボーイハットを被り、銃を腰に挿し、馬の代わりにジープを乗り回し、時には西部劇のような銃撃戦を繰り広げる荒くれ者、鉱山のカウボーイたち。
エスメラルデーロ同士の抗争は日常茶飯事で、命を落とす者も多い。だが、深く鮮やかな美しいグリーンの石に夢を求めて、集まってくる者は後をたたなかった。30代の日本人青年、早田英志もそのうちの一人だった…。
何ももたないエスメラルデーロから、今やエメラルドの鉱山、輸出会社、警備会社を経営し、「エメラルド王」とまで呼ばれるようになった男、早田英志。本作品は、1940年埼玉県生まれの早田が、遠く離れたコロンビアの地で夢をつかんだ自分の半生を、本人の監督・脚本・出演により再現したドキュメンタリー映画である(監督はアンドリュー・モレナと共同)。
作品は、冒頭で現在の早田のエメラルド・ビジネスの様子を映し出し、25年前の回想にうつる。1975年、エメラルドに魅せられて鉱山に一人やってきた青年、早田。女エスメラルデーロ、スサーナに原石の品定めや交渉の仕方を習い、アメリカ人エスメラルデーロのデイブとソシオ(パートナー)を組んで原石を取引する。
偽モノを掴まされそうになったり、命を狙われたり、身代金目当ての誘拐犯に美しい妻や可愛い娘たちが狙われたり、身に覚えのない殺人容疑をかけられたり、数々の危険にあいながら、エメラルド・ビジネスで成功していく様が描かれる。
冒頭と終わりの現在の早田を早田本人が演じ、メインの若き早田役をコロンビア人俳優ルイス・ベラスコが演じている。当初は、ハリウッドから監督と主演に日系アメリカ人俳優の起用を予定していたというが、ゲリラや誘拐・強盗事件の頻発する現地での撮影に恐れをなし、監督も俳優も辞退してしまったという。そのため、早田本人が監督をつとめ、現在の早田役も本人がドキュメンタリー的手法で演じ、その間に若き日の早田役の俳優をキャスティング。
ベラスコは日本人には見えず、話す言葉(英語)もコロンビア人のイントネーション(と思われる)で違和感があるが、出演する度胸のある日本人または日系人俳優は一人もいなかったということか。もっとも、ベラスコはなかなか魅力的であるし、すぐに話の面白さに引き込まれて、違和感などはどうでもよくなる。それに、本作品を見れば、出演しようという勇気ある俳優がなかなか見つからなかったのも納得がいく。
コロンビアは、政府軍、左翼ゲリラ、右翼非合法武装集団が衝突を繰り返し、テロや武力抗争などが絶えない。本作の現在のドキュメンタリー部分では、撮影中に実際にゲリラに襲われて応戦するシーンも含まれている。治安の悪いコロンビアの、それも部外者を寄せ付けない鉱山地帯にあって、まさに危険と隣り合わせの撮影だったであろうことは想像がつく。
原石を光にかざして色や傷の具合を確かめ、研磨後の販売価格を想定して仕入れ値の交渉をする。想定価格を高回る石も下回る石もあってギャンブル性が高い。原石を見極める確かな目と交渉力、そして何よりも度胸が必要だ。
そうした一介のエスメラルデーロからはじめた早田。多数のボディーガードを引きつれ、防弾チョッキを着け、拳銃で武装して身を守る現在の彼の姿は、ギャングの親玉のようにも見えなくもないが、有能な実業家で情熱をもった冒険家である。原石買付、加工、輸出、鉱山開発などのエメラルド・ビジネスの実態も垣間見ることができて、興味深い。
日系人の早田がどうやって現地で信頼を得て成功したのか。こんな日本人がいたのか、こんな世界があるのかと、うならされる。アメリカのある新聞では、「今までで最もエゴの強い映画」と評されたというが、ここまで強烈で魅力的なエネルギーあふれる人物、多少自己主張の強い作品をつくったとしても逆に当然だとも思わされる。
作り物のアクション映画よりも緊迫感にあふれている。こんなにもスリルのある豪快なドキュメンタリーが他にあるだろうか。(Saiko/ViVa!コンテンツサポーター、2005年1月)
