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(c)2003 ランブルフィッシュ1945年、敗戦色が濃くなってきた夏、九州宮崎県霧島を舞台に15歳の少年の苦悩とそのまわりの人間の生き様を描く。フィクションではあるが、監督の「逃れられない記憶」が投影された作品。エキプ・ド・シネマ発足30周年記念作品第1弾。
■監督:黒木和雄
■2002年日本/118分/シネマスコープ
■出演:柄本佑、小田エリカ、石田えり、香川照之、左時枝、牧瀬里穂、原田芳雄、他
■配給:パンドラ/上映:岩波ホールにて2003年12月6日(土)より上映中。他全国公開予定
■公式ページ
1945年5月。当時15歳の黒木少年は勤労動員先で空襲に遭い、目前で友人が被爆。助けを求めたかのように見えた瀕死の彼を置いて逃げてしまった。そのショックでノイローゼ状態となり休学して祖父母の家で療養、そのまま敗戦をむかえた。――本作品は黒木監督自身の体験をベースに、戦時下の人々の日常が綴られる。
「ないごて おいの方が 生き残ってしもたとな」
友人が死に自分が生き残ったことが後ろめたい。主人公・康夫(柄本佑)は、地主である祖父母の家に預けられ、学徒動員にも出ずにうつうつとして暮らす。厳格な祖父・重徳(原田芳雄)は康夫を「意気地なし」といい、住み込みの女中のなつ(小田エリカ)は康夫を頼りないと心配しながらも歳が近いせいか親近感を抱いている。ある日、康夫は、死んだ友人の妹に会いにいくが……。主人公を演じる柄本佑は、俳優・柄本明の息子でこれが演技初体験。ひょろりとして頼りなげな独特の雰囲気で、多感な少年の内面の葛藤や無力感を見事に表現している。原田芳雄の存在感,小田エリカの可憐な表情も印象的だ。
物語は康夫と彼をとりまく人々の様々なエピソードより成る。なつの母のイネ(石田えり)は小作農で、戦死した夫を思いつつも貧しい暮らしのなか生きるために駐屯兵を床に迎え入れる。そんな母を悲しみ恥じながらも受け入れる息子の稔(倉貫匡弘)。なつの女中仲間のはる(中島ひろ子)は、周囲の段取りに好まずとも戦傷兵のもとに嫁いでいく。はるの結婚式のために嫁ぎ先から一時帰郷した康夫の叔母の美也子(牧瀬里穂)は特攻兵として戦地へ赴く昔の恋人に逢う……。
この映画には空襲や戦闘の場面はない。霧島山の麓に広がる美しい田園風景のなか、描かれるのは、戦争で傷つき、悩み、心を閉ざしたり、自暴自棄になったり、無力感を感じたりする、不様だが懸命に日々を生きる人々のドラマである。それがかえって、戦争が人々に与えた痛みを観る者により強く伝えてくれる。
戦争を経験していない私たちの世代では、当時を知る者が感じるであろう郷愁や呼び覚まされる想いなどを共有することは難しいかもしれない。だが、ちょうど今、イラクでのテロに対する戦争が進行している情況下だけに、戦争がもたらすものは何かを考えさせてくれる。もっとも、そんなに難しく重たく感じずに、気楽に映画館に足 を運んでほしい作品である。(Saiko/ViVa!コンテンツサポーター)
☆追加情報:黒木監督の新作、井上ひさし原作「父と暮らせば」を映画化した作品は、2004年の夏公開予定。「明日/TOMMOROW」、「美しい夏キリシマ」に続く戦争3部作の3作目。主演は、宮沢りえ、浅野忠信。
投稿者: Saiko 2003年12月01日