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特攻兵が出撃前に弾いたピアノにまつわる実話を映画化。2004年秋公開予定『草の乱』の神山征二郎監督が描いた約10年前の作品。今年8月15日に、同原作の朗読劇が公演されることでも話題に。
■監督:神山征二郎/原作・脚本:毛利恒之
■出演:渡辺美佐子、仲代達矢、山本圭、若村真由美、永野典勝、田中実、石野真子、他
1993年/日本/112分
■製作:仕事、配給:日本ヘラルド映画、ヘラルド・エース、映画「月光の夏」全国配給委員会
佐賀県鳥栖市。元音楽教師の吉岡公子は、鳥栖小学校にある廃棄寸前の古いグランドピアノの保存を訴える。そのピアノは、約45年前の1945年初夏、若き二人の特攻兵が出撃前に弾いた思い出のピアノであった。その話を聞いたラジオ局の石田りえは、ドキュメンタリー作家の三池安文とともに、生き残った特攻兵を探し出すが……。
生きて帰れぬ出撃の前にもう一度思い切りピアノを弾きたいと、目達原基地からピアノがある鳥栖小まで10数キロの距離を走ってきた二人の特攻兵。一人はベートーベンの「月光」を奏で、もう一人は「海ゆかば」を弾いて、基地に戻った。二人はピアニストや音楽教師になりたいという夢を持っていた学生だった。敗戦が近くなった当時の日本は、二人のように若い学生たちまでを動員し出兵させていた。
作家の三池らは、生き残った特攻兵を捜していくうちに、エンジン不調で特攻の途中引き返したり不時着したりして生き残った兵たちを収容した施設「振武寮」の存在を知る。軍は特攻帰還者の存在が国民の志気を下げることを懸念し、家族には戦死したことにし、帰還者を寮に収容していたという。
ピアノを弾いた特攻兵のうちの一人、風間森介も生き残り、振武寮に送られた。エンジン不調でむだ死にはすまいと戻ったが、もう一度出撃させてほしいと頼む彼に、軍の幹部は、死ぬのが怖くて戻ったのではないか、「帝国軍人の恥さらし」とののしる。その夜、寮の窓から差し込む月光に照らされた風間の顔をつたう悔し涙。映画は、生き残ったがために辱められ、死んだ仲間に負い目を感じて生きてきた元特攻兵たちの苦しみを伝える。
グランドピアノを目の前にして「私は生き残りました」という風間に、「よう生きとってくださいました」と答える吉岡。映画は少し救われた思いがする場面で終わるが、風間の弾く「月光」のメロディに、特攻で死んでいった者たちの痛々しい最期の映像が重なる。特攻兵の多くは敵の艦隊に体当たりする前に敵に撃墜されたという。神山征二郎監督は、「戦争に行った者は痛みを感じたはず、恐怖を感じただろう」とそれらの映像を加えたと語っている(2004年4月9日の講演にて)。
本作は、2004年秋に『草の乱』(秩父事件120周年記念作品、主演:緒形直人)の公開を控える神山監督が、約10年前に撮った作品である。
『草の乱』今秋公開を記念して、2004年4月9日に、神山監督の講演と『月光の夏』の特別上映が、「草の乱」出版の会の主催で文京シビック小ホールにて開催された。上映終了時の挨拶で、主催者が「10年前の映画だが、なんと今の世相にあっていることか」と述べられた。自衛隊のイラク派遣がこの先どうなるのかという現実に、「月光の夏」に描かれた当時の日本の状況がオーバーラップして、おそろしい気がする。(Saiko/ViVa!コンテンツサポーター)
<関連情報>
創立45周年を迎える劇団東演では、平和への願いをこめて「月光の夏」の舞台化に96年から取り組んでいる。特に、2003年2月にスタートした朗読劇「月光の夏」では、今年8月15日12時00分に全国各地で同時に公演するプロジェクトを広く進めている。
同時公演プロジェクト参加団体の形態や規模、会場の種類などは問わず、地域のサークルや学校などのクラブ活動、セルフプロデュースによる公演でもOK。5月から8月まで茨城、神奈川、静岡、沖縄各県下で巡演するほか、8月13日から15日までスペースゼロ(新宿)で公演。(13日=19:00、14日=14:00、15日=12:00、全て一般3000円)
問い合わせは同劇団(TEL:03-3419-2871、E-mail: info@t-toen.com)まで。
・劇団東演
<関連メディア>
・原作文庫:毛利恒之(著) 講談社 495円
・原作朗読ブック:毛利 恒之(著) サンマーク出版 1,300円