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ムービーレビュー

ボランティアや市民活動に関する映画やビデオ作品などの映像とともに、自主上映情報なども紹介します。

草の乱

秩父事件120周年記念作品。4億5,000万円の製作費のほとんどが市民らの出資・寄付等により集められ、延べ8,000名のエキストラはボランティアという、多くの市民の参加・協力によって草の根的に製作された映画。2004年9月より全国各地で公開予定。

■監督:神山征二郎/製作総指揮:砂村惇/脚本:加藤伸代
■出演:緒形直人、藤谷美紀、杉本哲太、田中実、田中好子、林隆三、他
■2004年/日本/118分
■リンク/上映情報

1884(明治17)年11月、悪政や高利貸しに苦しむ秩父郡などの民衆が、貧民の救済を求めて「困民党」を結成し、武装蜂起した・・・。


映画は1918(大正7)年、北海道野付牛町に暮らす一家の場面から始まる。妻の再三の願いにもかかわらず頑として入籍させなかった男が、死を目前にして、隠してきた半生を妻子に告白する。自分の本当の名は“井上伝蔵”だと。本籍は埼玉県秩父郡・・・。

1884年の秩父事件後、行方がわからず欠席裁判で死刑判決がくだされた井上伝蔵は、北の地で名を変え生きていた。映画は、困民党会計長の井上伝蔵を中心に捉え、長い間“暴動”とされた秩父事件を、近代日本民主主義の源流とする視点から描き出す。

主に養蚕で生計をたてていた秩父地方の民衆は、生糸価格の暴落と、中央集権・軍備増強をはかる明治政府の増税策にあえぎ、借金に頼らざるを得なかった。それにつけ込む高利貸しによって身代限り(破産)となる農民が続出。自由民権運動が秩父でも盛んになるなか、農民たちは困民党を結成し、借金据え置き・諸税軽減などの誓願運動をするが、官側に取り合ってもらえず、ついに蜂起を決意する。

夕刻、かがり火の焚かれた神社の境内に集まった男たちの厳しい面もち。命を捨てる覚悟の夫たちを引き留めたくともできずに、彼らのためにめったに食べられぬ白米のおにぎりを握る女たち。集団交渉に応じない高利貸しの打ち壊しと役所の占拠を目的に、男たちは動き出す。

井上伝蔵や加藤織平(困民党副総理)らを先頭に、竹槍やのぼりを持ち、白い鉢巻きとたすきを付けた困民党約1,000名が荒川を渡る場面や、郡役所へ走っていく場面は圧巻である。必死の想い、熱気が伝わってくる。

また、フランスのDeep Forestが担当し、国指定重要無形文化財である秩父屋台囃子を取り入れた音楽が、各場面を盛り上げる。美しいソプラノのLyricoが歌うエンディングの主題歌が余韻を残す。

井上伝蔵を演じた緒形直人氏は、秩父事件を「土地への愛情、仲間たちへの友情、家族への愛、そういうことが発端となって起きた事件だと解釈した」と語っている(2004年4月27日の完成披露試写会での舞台挨拶で)。愛するものを守るため、よりよい世の中を求めた秩父農民の行動は、単なる暴動ではなく志の高いものであったことを映画は伝えようとする。

不況、高利貸し、増税、軍備増強という当時の時代背景は、デフレ不況、サラ金、消費税や社会保険料の引き上げ、自衛隊のイラク派遣など、今の日本と重なるところが多い。悪政に我慢することなく、秩父の民衆は立ち上がった。世の中が狂った方向に行こうとしている時に、黙って傍観するのではなく、意思表示し、行動しなければいけないと、本作品は訴えかける。

もっとも、やむを得なかったのかもしれないが、秩父事件では武力で立ち向かおうとして失敗した。世界各地でのテロ行為や戦争が結局は理想の実現をより困難なものにしているのと同じこと。武力ではなく、理性や心に訴える形で動かなければならないと、戦闘シーンを見ながら考えた。

秩父事件の映画化は、「ハチ公物語」、「遠き落日」、「月光の夏」などの神山征二郎監督が、30数年も前から構想を温めてきたものである。


今秋(2004年秋)の一般公開に先立ち、本作の完成披露試写会が2004年4月27日に有楽町朝日ホールにて行われた。
当日は上映前に、神山征二郎監督、出演者である緒形直人、藤谷美紀、杉本哲太、田中実の5氏が舞台挨拶を行った(それぞれ井上伝蔵役、伝蔵の昔の妻こま役、加藤織平役、積極的に謝金据え置き誓願の運動を進めた高岸善吉役)。

神山監督は「悔いのない仕事をした」と語り、個人の出資や寄付などによって4億5,000万円という多額の製作資金が集まり映画化できたことに感謝を述べるとともに、出資を返すためにも、今秋からの全国各地での上映を成功させるための協力をお願いした。

加藤織平役の杉本哲太氏は、「延べ8,000人のボランティアのエキストラが参加して、現場はものすごくテンションが高く、そのエネルギーに負けないようにと演技に力が入った」と語る。監督、俳優、スタッフ、ボランティア、出資者など、数多くの人々の熱い思いが込められた映像である。本作品の上映に、さらに多くの人々が足を運ぶことを期待したい。(Saiko/ViVa!コンテンツサポーター

投稿者: Saiko  2004年06月01日