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ムービーレビュー

ボランティアや市民活動に関する映画やビデオ作品などの映像とともに、自主上映情報なども紹介します。

春夏秋冬そして春

春のシーンを表した写真幼年から老年にいたるまでの一人の男の人生を四季の移ろいに重ね合わせて……。息をのむほど美しい映像で綴るキム・ギドク監督作品。
 
 

■監督・脚本・編集:キム・ギドク(『魚と寝る女』『悪い男』)
■音楽:パク・ジウン/挿入歌:キム・ヨンイム「旌善(チョンソン)アリラン」
■出演:オ・ヨンス、キム・ジョンホ、ソ・ジェギョン、キム・ヨンミン、キム・ギドク、ハ・ヨジン
■2003年/102分/ドイツ=韓国/配給:エスピーオー/宣伝:アニープラネット
■10月30日よりBunkamuraル・シネマ(東京)にて公開、ほか全国順次公開、作品公式HP URL:http://www.kimki-duk.jp/spring/
■2003年ロカルノ国際映画祭コンペティション 青年批評家賞ほか3部門受賞、2003年サンセバスチャン国際映画祭観客賞受賞、2003年青龍賞最優秀作品賞受賞、2004年大鐘賞最優秀作品賞受賞、ほか


夏のシーンを表した写真 世間から隔絶されたような山奥の美しい湖。その湖上に浮かぶ小さな寺に暮らす老僧と幼い童僧の二人の物語から始まり、童僧が成長し老いてゆくまでの人生の四つの時期を、季節の移ろいになぞらえた作品。
 
 生命の息吹が感じられる「春」、小動物をいじめて無邪気に楽しむ童僧に、老僧は命の重みを教える。幼かった子どもが成長し17歳となった「夏」、同い年の少女が養生のために寺を訪れ、彼は恋を知る。つのる恋の執着に、老僧の教えも聞かず、少年は少女を追いかけて山寺を後にする。それから10数年の時が過ぎた紅葉の美しい「秋」、裏切った妻を殺して男は寺に戻ってくる。怒りと苦痛に堪えきれず自害を図る男に、老僧は心を静めるようにと諭す。月日が流れて湖面を氷が覆う「冬」。服役を終えて寺に戻ってきた男は、老僧の遺骨を拾い、氷に仏像を彫る。顔を隠した女が寺に置き去りにした赤ん坊を預かる。
 そしてまた「春」。赤ん坊は大きくなり、いつぞやの春のように、生き物をいじめては笑い声をあげる。それを見守る男……。

秋のシーンを表した写真 幼年期、思春期、成人、そして壮年期と、それぞれ別の俳優が演じており(壮年期の男の役はキム・ギドク監督自身が出演)、いずれも鮮烈な印象を残す。
  蛙、蛇、魚の背に石をくくりつけて、天使のようにあどけない顔で笑う幼子。「春」の童僧役のキム・ジョンホはあまりに愛らしく、いたずらの残酷さとのギャップに背筋を一瞬冷たいものが走る。

 「夏」の少年を演じるのはソ・ジェギョン。湖でボートに乗る時によろめいた少女を支える時のどぎまぎした表情。はじめての恋に喜びを感じ、一方でおさえられない恋心と仏の教えの間で葛藤し、震えながら読経する様子など、思春期の少年を好演している。
 「彼女を愛していたんです。それが罪ですか?」と「秋」で妻を殺した男を演じるのはキム・ヨンミン。わきたつ怒りと苦しみを制御できず、湖でボートを力任せにこぐ。床一面に書いた般若心経の文字を、ナイフで一つひとつ彫っていくなかで心が静まっていく。感情がよく表れる目がとても印象的だ。

冬のシーンを表した写真 「冬」、心の平安をもとめて修行にはげむ壮年期の男を演じるキム・ギドク監督。心にのしかかる人生の重しのような石を背負って雪山を歩く男の様子に、幼き童僧の姿を思い出す。男の映像に、国民的民謡歌手キム・ヨンイムが歌う民謡「アリラン」の美しくももの哀しい歌声が重なって涙を誘う。そしてエピローグの「春」で、幼い少年を育てる男。監督はどんな思い入れでこの役を演じたのだろう。
 春夏秋冬、ため息がでるほどの美しい景色のなか、彼らそれぞれの表情が、眼差しが、観る者の心につきささる。

 季節が何度でも巡り変わるように、人は生まれては老いてゆき、そしてまた新しい世代の命が誕生し成長していく。人生で経験する、喜びや悲しみ、苦しみ。愛情や欲望、怒り、葛藤、そして安らぎ……。本作品は、水を閉じこめた湖の面がボートにゆれるように観る者の心をゆさぶり落ち着かなくさせながら、同時に、水晶のように透き通る水に、様々な感情に押しつぶされて疲れた心が洗われていく、そんな不思議な魔力をもつ。(Saiko/ViVa!コンテンツサポーター

投稿者: Saiko  2004年10月01日