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ムービーレビュー

ボランティアや市民活動に関する映画やビデオ作品などの映像とともに、自主上映情報なども紹介します。

ウィスキー

並んで立つ男女の写真セリフも表情も押さえられているのに、伝わってくる人物の気持ち――南米ウルグアイの小さな街を舞台に、中年の男性二人、女性一人が織りなす風変わりなコメディ。
なぜ、「ウィスキー」なのか? タイトルに込められた意味は、映画を観てのお楽しみ。

■監督:ウアン・パブロ・レベージャ、パブロ・ストール
■出演:アンドレス・パソス、ミレージャ・パスクアル、ホルヘ・ボラーニ、他
■2004年/ウルグアイ、アルゼンチン、ドイツ、スペイン/94分
■配給:ビターズ・エンド/宣伝:ムヴィオラ 
■2004年カンヌ映画祭 オリジナル視点賞・国際批評家連盟賞
 2004年東京国際映画祭 グランプリ、最優秀女優賞
■2005年4月29日から渋谷シネ・アミューズにて上映中、5月中旬より大阪テアトル梅田ほか全国順次公開
詳細はオフィシャルサイト


南米ウルグアイで、小さな靴下工場を営む初老の男性ハコボと、その片腕となって黙々と働く中年女性マルタ。長年一緒に働きながら、二人は親しい会話を交わすこともなく、単調な日々を送っていた。ところがある日、ハコボの母の墓石建立式に出るため、ブラジルで靴下工場を経営する弟エルマンが久しぶりに訪ねてくることになり、ハコボはマルタに妻の振りをしてほしいと頼む。ほとんど他人同士の3人が、数日間、一緒に暮らすことになって・・・。

エアホッケーをする大人たち靴下工場と海辺のリゾート地を舞台に、中年の男性二人と女性一人が織りなす、風変わりなコメディ。セリフも表情も抑えられているのに、次第に登場人物たちの人物像や心のうちが見えてくる。また、寄せられたベッドと離されたベッド、机の上に飾られた写真といつの間にか片付けられている机の上など、部屋の中の描写が、人物の心の動きを想像させる。こうして、はじめは似たもの同士のように見えたハコボとマルタの違いが、いつの間にか鮮明になる。また、ハコボとエルマンが贈りものを交換するシーンは滑稽で、それだけで兄弟の性格の似たところや違い、二人の間にあるわだかまりが表れてくる。街中を走る車のシートから見えるウルグアイの町並みもどこかしんみりとして、人物の気持ちが投影されているようである。

背の高いハコボの頭の上の部分やマルタの口から下が画面から切れていたりして、不思議な構図も多いが、全編、固定したカメラで撮影されているためであるという。それが独特の雰囲気をかもし出し、何ともいえないユーモアとともに観る者を惹きつける。

乾杯する三人靴下工場での単調な一日は次のように始まる。工場入り口のシャッターの前で、イヤホンで音楽を聴きながら雇い主のハコボを待つマルタ。古びたカフェで朝食をとったハコボが工場に来て、シャッターを開ける。電源スイッチを入れ、古びた機械がブーンとうなりながらまわりはじめる。マルタはハコボにお茶をいれ、細々とした用事を片付け、二人の従業員の女性と靴下製造の仕事をこなす。勤務時間終了時には、タイムカードを押した従業員二人の鞄の中身をチェックする。電気を消して、マルタが工場を出ると、ハコボがシャッターを閉め、「また明日」と別れを告げる。ハコボに隠れて、たまにラジオを聴きながら仕事をすることも、煙草を吸う時もあるが、平凡で退屈な日々が繰り返される。
エルマンが訪ねてこなければ、長い間そうしてきたように、同じような日々が続いていったのだろう。だが、ハコボの見栄か、弟を心配させないためか、夫婦を演じるという小さな嘘から、彼らの人生が少しずつ変わり始める。

結婚しているように見せかけるために、一緒に撮った写真が一枚もないのはおかしいと、カメラの前で作り笑いをする二人。それまで無表情だっただけに、二人のぎこちない笑顔はとても印象的である。
結末は、偽の夫婦を演じていくうちに互いに惹かれあって結ばれるという、ありきたりのものではない。観客に解釈の余地を残しつつも想像させるラストは、観客を驚かせながら納得させるだろう。別れ際に、マルタがエルマンに「飛行機で読んで」と渡したメモの中身を、観終わった後にあれこれ想像するのも楽しい。

そして、なぜ、タイトルが「ウィスキー」なのか? その意味がわかる場面で、観客は可笑しくなって思わず声を出してしまうに違いない。
多くの人が本作品を気に入って、「はい、ウィスキー」と笑顔を見せることが流行るのではないかと期待する。
(Saiko/ViVa!コンテンツサポーター、2005年5月)

投稿者: Saiko  2005年05月04日