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ViVa! 市民活動スクランブル
第19回/NPO Introduction
つくばコンサート −−地方都市で活躍する「音楽会系」草の根NPO (2003年8月26日掲載)
弦の響きが自慢のノバホール
茨城県つくば市は、1987年に5町村が合併した人口約20万の都市で、東京とその近郊から大学や研究機関がつくば市と隣りの茎崎町(その後つくば市と合併)に移転し、企業の研究機関も多数立地する「研究学園都市」である。市の交通の要所・つくばセンターには、公共施設、商業施設、ホテルなどが入る「つくばセンタービル」がある。その一角に1983年にオープンしたのが、1003人収容の本格的コンサートホール「ノバホール」だ。
定員は1003人、東京六本木にあるサントリーホールのちょうど半分である。自慢はなんと言っても響きのよさ。演奏家、特に弦楽器奏者に好評で、たとえばベルリン・フィル・コンサートマスターの安永徹さんからは、「手の届くところに音を乗せてやるとだんだんと客席に伝わっていく様子がわかる、すばらしい音響だ」と賛辞をいただいた。数はそう多くはないが、ノバホール収録のCDも発売されている。
そのノバホールを舞台に、市民ベースで本格的な自主公演を企画し、成功を収めてきたのが、音楽会系NPO「つくばコンサート」だ。

ノバホール外観。
「つくばコンサート」の発足
ノバホールは、今日ではつくばコンサート実行委員会の主催する「つくばコンサート」や、つくば都市振興財団による「つくば国際音楽祭」が年間あわせて20公演ほどを開催し、他にも多数の公演がある。また複数のオーケストラ、多数の合唱団など地元のアマチュア団体が定期演奏会を開いている。秋は平日を含めてほぼ予約でいっぱいで、人口20万程度の地方都市のホールとしては驚異的な利用率といえよう。
しかし、ノバホール建設1年目には音楽公演がほとんどなかった。そのため、一流のオーケストラを聴けるようにしたいという市民の要望が強くあったが、冒頭で紹介したように、ノバホールの定員はサントリーホールの半分。同じオーケストラの公演を開催するにしても、サントリーホールの満員ベースでやっと成り立つ公演は、当然ノバホールでは経済的に成立しない。そのため、寄付金・協賛金を得てチケットの値段を市民が求めやすいものに下げることが不可欠である。
この状況を聞いた大手コンピュータメーカーの富士通が協賛してくれることになったのを機に、ホールの有効活用を求めていた有志が集まり、1984年に市民が企画・運営の全てを担当する「つくばコンサート」が発足した。同社は「金は出すが口は出さない」、「企業の宣伝色を前面に出さない」方針で「つくばコンサート」を協賛して今日に至っている。また、つくば都市振興財団からも、会場賃借料の支援を頂いている。

ノバホールの定員は1003人。
市民による企画・運営
「つくばコンサート」の企画・運営は「つくばコンサート実行委員会」が担い、毎月実行委員会を開き、誰でも企画運営に参加できるオープンな組織になっている。
つくば市やその近隣の市民数十名からなる実行委員会で討議し、年間5〜7回のコンサート企画を決定するほか、予算の作成、招聘音楽事務所との交渉、ポスターなどの作成、宣伝紙の編集・発行、演奏会当日の運営など全てを実行委員会が担っている。運営が素人であろうがプロであろうが、お金を払って聴きに来るお客様には関係ない。このNPOは素人集団の特性を活かし、「世界の音楽を私たちの手で」をキャッチフレーズに、企画を工夫してきた。
このような素人企画が地方都市で根付くのは困難と思われたが、大勢の人々の熱意と努力と知恵が今日の活動を支え、素人集団のコンサート企画も1999年には100回目の記念演奏会、2003年には20年目を迎えるまでになった。「市民のために市民が企画」する、開催者としての利益は追求しない文字通りのNPOである。ただし、NPO法に基づく「特定非営利活動法人」としての認可を受けて活動しているわけではない。
年数回発行する新聞「ホワイエ」には、自前の演奏会情報は当然として、ホール予定などの実用的なページも設け、また音楽の雑学コラムなどの様々な読み物も盛り込んでいる。
チケットを積極的に購入したお客様だけで会場を満たし、集中度の高い大変よい雰囲気を保つ様努めており、演奏家にはホールの響きの良さ、熱心な聴衆の両方で好評を得ており、またお客様にも満足いただいているが、お客様の少ない日には、こんなにいい演奏会なのにもったいない、宣伝が足らないとお叱りを受けることもあり、この点では反省が必要かもしれない。
これまで招聘した演奏家
演奏会はクラシック音楽が大半を占めるが、年間1公演はジャズなどクラシック以外の公演に充て、また邦人演奏家の公演を年1回実施してきた。予算の関係で大物を次々に呼ぶのは困難だが、知名度には必ずしもこだわらずに実力があると私たちが判断した演奏家をその都度招聘してきた。
これまでに招聘した大物演奏家では今はベルリンフィルに移ったサイモン・ラトル指揮バーミンガム市交響楽団を98年に招聘したほか、ヤンソンス指揮レニングラードフィル、シノポリ指揮のフィルハーモニア管弦楽団、シャイー指揮アムステルダムコンセルトヘボウ管弦楽団などがあげられる。
室内楽では弦楽四重奏の王道を行くスメタナ弦楽四重奏団とアルバンベルク弦楽四重奏団、現代曲では圧倒的な評価を得たラサール弦楽四重奏団、東欧の渋い音を残すバルトーク弦楽四重奏団などを招聘した。
ソリストでは、本流の大物ピアニストのアシュケナージ、ショパンコンクール予選落ちの異色の大物ピアニスト・ポゴレリチ、東ドイツ難民キャンプで文字通り「発見」された異色のピアニスト・ウゴルスキ、世界的なヴァイオリニストのギドン・クレーメルなどがある。 その中でも極めつけの異色コンサートとしては、作曲家の高橋悠治と、妹でピアニスト高橋アキによる、20世紀音楽ばかりのピアノデュオがあった。
一方で、バッハやベートーヴェン初期の時代の様式の楽器、あるいは当時の演奏方法を用いる古楽奏者も多数招聘している。

2003年度後半の公演。クラシックからジャズまで幅広い。
あなたの街でも市民企画を!
こうした市民企画が手探りながら成功して続いているのは、決してつくばの特殊事情ではなく、市民が力を合わせれば可能であるはずだ。
みなさんの街にも、すばらしいホールはあるけれど音楽行事には残念ながらあまり活用されていないという事情があるかもしれない。そういう場合には、中心となる市民の運営集団ができ、その意義を認めて自社の宣伝効果も認めるスポンサーが見つかれば、あなたの街でも市民企画ができる。
それぞれの地域に根ざした市民活動が発展する。文化は市民が自らつくり育てる。その代わり、その質を維持し高めていくために、市民が責任をもって関わっていく。
私たち「つくばコンサート」の事例をひとつの参考としていただき、そういう活動が全国各地に広がり、発展してほしい。
