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ViVa! 市民活動スクランブル

第29回/Event Report

「ダム撤去」国際シンポ@八代市に参加してきました・その2 高橋ユリカ(ジャーナリスト/川辺川・東京の会) (2004年4月28日掲載)

アメリカの撤去費用は一桁安い

発表の様子の写真
ジェームズ・F・ジョンソン氏。
アメリカでダムが撤去されるようになったのは10年前からで、200箇所がすでに撤去され、290箇所が予定されています。まだ巨大ダム撤去は行われたことがありませんし、予定もされていません。これまで撤去された最大は高さが29mのもの。30mくらいのものが6つほど調査中。
  つまり、高さ25mの荒瀬ダムは、大きさとしては中の小くらいですが、撤去されたもののなかでは大きい方に分類されます。すごいですねぇ〜熊本県も!
  で、しかも、撤去費用が、荒瀬ダムは約60億円といわれていますが、アメリカでは一桁安い・・・それはなぜ?という質問に「たぶん、民家が廻りにないから」とのこと。うひゃ。もしかしたら、これほど民家が隣接している事例はアメリカにもなさそうです。
  また、ウェグナーさんが雑談のなかで話しておられましたが、「日本の技術は世界に誇る力があるのだから、むしろ、これからは日本が発信することになるのではないか」と。ほんとうに、そうですね。アメリカよりも、ともかくその気になってやり始めたらきっと早い!
  アメリカでは、すでにダム撤去工事が「利権」がらみになっているようで、ジョンソンさんいわく、「力のある政治家がいるところでは早く撤去ができる」と、撤去工事の取り合いになっているとか。日本も早くそうなって欲しいと言ってよいもんだか、悪いもんだか〜(^、^;

ダム撤去が日本の公共事業を救う?!

実はアメリカでも、大きな問題は、撤去費用を誰が負担するかということのようです。 撤去したほうがいいとわかっているダムでも、費用負担者間での合意をするのが難しい事例があるとか。うーむ。もしかしたら、日本では、急がれている産業構造の変革ですが、じり貧の土建業界、息絶える前に、がんがんダム撤去をやって日本でのアンバランスな大規模公共事業費をともかくそちらに廻すという考え方もありえますね。
  ダム撤去最大の課題は、堆積物をどうするかということ。なにしろ、有害物質と化しているヘドロなどを含め、膨大な量になるわけです。このあたりが海への影響を含めて最も心配なところ。アメリカでも苦労をしているようです。
  ということで、お二人のとても明快な理念とお話に感動しつつ、なんと、熊本では、川辺川ダム問題を通して、ちゃんと合意形成などのやり方を学んでいると実感しました。アメリカでも苦労は絶えないわけで、熊本県は、ほんと、すごい・・・。
  日本でも、アメリカでダムを造らないという理念が広く伝わるきっかけとなった「世界ダム委員会」(世界銀行(世銀)と環境NGOの世界自然保護連合が主導的な役割を果たしました。直接の契機となったのは、世銀の業務評価局が1996年9月に実施したダム事業に関する事後評価である。詳しくは http://www.dams.org/news_events/outline_jp.htm で)がもっと広まるといいなと思いました。こちらの報告書が流通すれば、「住民討論集会」の環境討論集会で議論されていることが、すでに世界的に当然のことだったりするわけですから・・・。

(全文は膨大ですが、簡潔にまとめたものが翻訳されています。
  【世界ダム委員会(WCD)市民ガイド日本語版】
  500円(送料別)で入手できます。ご連絡はE-mail rwesa@foejapan.org へ)

川辺川ダムめぐり蓄積された力の大きさを痛感

今回のシンポジウムは、川辺川ダムをめぐって皆さんが蓄積された力の大きさを改めて痛感することができる機会ともなりました。
  イラクへの自衛隊派兵など、アメリカのやることには、なんでも追随しがちな日本社会。環境と経済のバランスからダムをやめるということこそ、ぜひとも、追随していただきたいですね。ただし、環境政策では、次々と失策をしている面もあるアメリカですから、なんでもかんでも追随というわけにはいきませんよね。念のため。 また、国交省は、「日本は川の傾斜があるので、ダムが必要」という言い方をしていますが、これについては、大熊先生が、「だからこそ、堆砂しやすく、後からの堆積物の問題が大きくなる」と指摘しておられました。 大熊先生のお話が素晴らしかったです。むしろ、アメリカの方たちも大熊先生がおっしゃる日本の伝統的な治水法について学ばれるといいのかもしれません。美しい石積み工法など日本独特のものもあるのですから・・・。
  また、裁判で農水省が敗訴して、2003年6月から着手されていた新利水計画の策定は、頓挫中です。あれほど、中立公平なということで農家の意向調査を行ったはずなのに、「川辺川ダムからの利水が最も安価(=ダムそのものの費用はまったく考えず、農家にとって安価という意味)」という調査結果を出してくるので、とても原告団は受け入れることができないといっているところです。このまま膠着状態を続けてもどうなるのかさっぱり予想がつきません・・・
  奥歯にものがはさまったように「川辺川ダム」が宙ぶらりんな状態。やっぱり、本来なら、何もかも含めて流域を調査すること、市民がどんな流域の河川計画を求めているのかから話し合っていただきたいものですね。それができたらどれだけ素晴らしい球磨川になることでしょう〜(^。^

 球磨川沿いに八代から人吉に向かう肥薩線の旅は、列車から荒瀬ダムを見ることができます。のんびりと球磨川下りをする船などをみながらお勧めのコースです。
  皆さまも、ぜひ、撤去される荒瀬ダムを見に行ってみませんか?

高橋ユリカ(たかはし・ゆりか)
ジャーナリスト。東京生まれ。早稲田大学第一文学部在学中に、米オレゴン州立大学へ交換留学生として留学。卒業後、文化出版局に就職し雑誌編集に携わった後、フリーの編集者、ライターになる。また、川辺川・東京の会で市民活動に取り組み、著書に、『誰のための公共事業か−熊本・川辺川ダム利水裁判と農民』や、大腸がんの闘病体験を書いた『キャンサー・ギフト/ガンで死ねなかったわたしから元気になりたいあなたへ』、『病院からはなれて自由になる』、『医療はよみがえるか〜ホスピス・緩和ケア病棟から』(岩波書店)などがある。環境や公共事業、医療など広範な社会問題について取材、執筆している。