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「環境保全のための市民・NGOの裁判権を確立するために by オーフス・ネット準備会」
<2003年3月10日、東京・衆議院第一議員会館>
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会議の様子 1992年にブラジルで開かれた地球サミットで採択された「リオ宣言」の第10原則には、「環境問題は、それぞれのレベルで関心のある全ての市民が参加したときに、もっとも適切に扱われる」と書かれている。「オーフス条約」は、その実現のために国連欧州経済委員会がデンマークのオーフス市で1998年6月に採択し、2001年10月に発効した国際条約で、市民が環境保全のために情報を入手したり裁判を起こす権利などを保障している。この条約の精神を受けた制度を日本国内でも作ろうと、2003年3月10日、「オーフス条約を日本で実現するNGOネットワーク(略称:オーフス・ネット)」の発足シンポジウムが行われ、多くの環境NGOや興味をもつ市民が参加した。
■オーフス条約を日本で実現しよう!
オーフス条約は、(1)環境情報へのアクセス、(2)意思決定における市民参画、(3)司法へのアクセス、の三点について国際的な最低基準を定めている。具体的には、環境情報をもっと誰にでもわかりやすいように開示し、ものごとを決めるときに市民やNGOが参加できるようにして、問題があれば市民やNGOが裁判を起こせるようにしよう、という内容が書かれている。

中下裕子さん シンポジウムでは、まずダイオキシン・環境ホルモン対策国民会議の事務局長で、弁護士の中下裕子さんが、「オーフス条約のアジア版を作って、日本だけでなくアジアで市民参画を実現したい」と、オーフス・ネットの発足を力強く提案した。さまざまな分野の環境NGOメンバーで構成されるオーフス・ネット設立準備会では、約2年前から同条約や関係する法律・環境分野についての学習会を重ね、すでにオーフス条約の日本語版を準備している。
今後は、オーフス条約に関する普及・啓発活動、日本での市民・NGO参画の法システムについての政策提言、オーフス条約への加入、またはアジア版オーフス条約の成立をめざして活動していく予定だ。日本では、司法制度改革の動きも正念場であることから、今回のシンポジウムでは、司法へのアクセスの問題も重要なテーマとなった。
■行政訴訟改革を使って環境訴訟をやりやすく

越智敏裕さん 基調講演を行った弁護士の越智敏裕さんは、日本弁護士連合会の司法改革調査室で、司法改革、特に行政訴訟改革に取り組んでいる。越智さんによると、行政訴訟改革は環境訴訟改革だ。
たとえば、今、あなたがクマの保護に取り組んでいるとしよう。クマの棲む地域にある自治体が道路を建設しようとしている。それを阻止するために、行政を相手に裁判を起こそうとしても、おそらく裁判所から、訴える資格(原告適格)がない、あるいは訴訟の対象になりませんと言われ、訴訟を起こせないことがほとんどであろう。今の日本では、直接自分の利害と関わる場合しか裁判を受けられない。クマを守ることは、個人の利害と関わるとは見なされないからだ。また、訴訟の対象や原告適格を審議するだけで何年もかかった後に、ようやく内容の議論に入る。それがなくなるだけでも、行政訴訟制度はずっと使いやすく意味のあるものになるはずだ。
しかも、現状では裁判になっても、「執行不停止」といって事業はそのまま進められてしまう。これも裁判になった場合は、原則として事業を止めること(執行停止の原則化)が実現できれば、裁判を起こしても対象となる建築物などができてしまい意味がなくなる現象を防ぐことができ、効果が大きい。
原告適格を拡大する方法としては、環境保全に取り組むNGOなどの団体が訴訟を起こせるようにする「団体訴訟」と個人でも行政の業務がきちんと行われていない場合に訴訟を起こせる「市民訴訟」がある。ドイツでは、自然保護の分野では法律で「団体訴訟」が認められており、環境NGOが裁判の原告となることができる。また、「執行停止」が原則であるため、行政訴訟の数が50万件と日本の2,000件に比べ圧倒的に多い。
一方、アメリカでは「市民訴訟」が導入され、訴訟の和解金がNGOの活動資金源にもなっているそうだ。行政訴訟改革が実行されれば、環境NGOにとって「使える」制度になる。越智さんは、「行政からの反対が予想される行政訴訟改革を実現するためには、国民の理解と関心が欠かせない」と強調する。
行政訴訟制度が見直されるのは40年ぶりとのこと。日本弁護士連合会では、行政訴訟改革案に対する意見を募集している。このチャンスを見逃さず、積極的に意見を出してほしい。
■ドイツの環境団体訴訟制度に学ぶ

大久保規子さん では、ドイツでは、実際どのような環境団体訴訟制度があるのだろうか。自然保護の分野については、公共性の高い環境NPOが環境行政を監視するという役割を担っている。その現状や団体訴訟制度の仕組みや評価について、甲南大学教授の大久保規子さんが解説してくれた。
ドイツでは、訴訟を起こせるのは行政庁から承認を受けた団体だけで、訴訟の制度と、行政制度への参加権が結びついていることが、ドイツの団体訴訟制度の特徴だ。団体が承認を受けるのは比較的簡単だが、承認団体は連邦レベルで20、州レベルでは各州10以内程度と多くはない。承認団体になると、意見表明権や鑑定書の閲覧権などを有する。つまり、意思決定の過程で意見を表明できなかった、あるいは意見を表明するために十分な情報が与えられなかったとすれば、「参加権が侵害された」ことになり、訴訟を起こせるのだ。
また、承認団体は不特定多数の市民の環境利益を守るための訴訟である公益団体訴訟を起こすこともできる。実際の団体訴訟は年間30件ほどだが、「違法行為の予防効果が高く,また,高速道路の建設反対訴訟でも環境NGOが勝訴している」と大久保さんは評価している。
■オーフス条約実現を望むNGOの声
二人の基調講演に続いて、NGOから、日本の司法制度が抱える問題についての報告やオーフス条約の実現への期待が語られた。発表を行ったのは、市民立法機構、高尾山天狗裁判原告団、全国市民オンブズマン連絡会議、全国消費者団体連合会、WWFジャパン、情報公開クリアリングハウス、メコンウォッチ、廃棄物処分場問題全国ネットワーク、原子力資料情報室、気候ネットワーク、水源開発問題全国連絡会の11団体のメンバー。

伴英幸さん NGOからの報告を聞くと、不十分な裁判制度をなんとか活用して、行政訴訟を行っている現状がよくわかる。そのうち情報公開クリアリングハウスの三木由希子さんは、「日本では『情報公開』と言うが、世界ではそれを『情報へのアクセス』というより積極的な意味で表現するようになってきた。内部告発も、危険や不利益を回避するために必要な情報へのアクセスの一つ。また、情報公開制度では非公開を行政訴訟で争うことで少しずつ公開が進んできたが、まだまだ市民にとって行政訴訟は十分な道具になっていない。ぜひ、オーフス条約を実効性ある制度として実現してほしい」と語った。
また、原子力資料情報室の伴英幸さんは「原告適格の問題が解決するのに加えて、団体として訴えられれば、ある団体が責任をもって継続して取り組むことができる」と期待を述べた。
最後に中下さんが「オーフス条約が日本で実現し、裁判制度が使いやすいものになれば、NGOにとって強力な武器になる」と、オーフス・ネットの設立を呼びかけた。幅広い団体のネットワークへの参加を期待したい。
(橘高真佐美/ダイオキシン・環境ホルモン対策国民会議常任幹事)
「オーフス条約を日本で実現するNGOネットワーク」(オーフス・ネット)
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E-mail: aarhus@e-npo.org FAX: 03-3834-2406
関連サイト
日本弁護士連合会/行政訴訟改革案に対する意見募集のページ