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世界情報社会サミット(WSIS)の第2フェーズが、チュニジアの首都、チュニスのKram Palexpoではじまりました。JCAFEからは浜田忠久代表理事のほか、会員ら数人が参加しています。この短期連載では、大詰めを迎えたWSISの現地から、JCAFE会員で大妻女子大学社会情報学部の柴田邦臣さんによるレポートをお届けします。
■はじめに―準備会合はすでにスタート
私は、昼間は大学で働いていて、夜はJCAFEの会員や仙台のNPOの運営に携わっています。昨年まで仙台の大学院にいて、主に障害者がパソコンを使うための補助技術(electrical Assistive Technology)のボランタリーな支援に関わってきました。
仕事で東京に出て、マイクロソフトの支援プログラムで浜田代表とご一緒させてもらい、JCAFEにも参加するようになりました。今回は本務もかねつつ、JCAFEのサポートとしてWSISに参加しています。JCAFEからは、浜田さん、東京大学大学院の原田先生、そして私が参加しています。
さて、WSISは11月16日から18日まで開かれます。現在(執筆時)は15日で、チュニスに来たのは2日前のこと。なぜこんなに早く来たのかというと、国連の準備会合(Resumed PrepCom-3)がすでに始まっているからです。本番前からいきなりすごいことになっているようです。
ここでWSISについて簡単に説明しますと、WSISは、国連が開催している世界会議の一つで、主な目的は、情報社会についての共通ビジョンの確立及び理解の促進を図るとともに、そのビジョンの実現に向けて協調的に発展していくための宣言と、戦略的な行動計画を策定することです。会議期間中は、各国政府首脳レベルや国連を中心とする国際機関、産業界、NGO、市民社会など広範な分野から参加者が同地に集まります。
2003年12月にジュネーブで開かれた第1フェーズでは、情報社会に関する共通ビジョンの確立及びこのビジョンの実現に向けて協調的に発展を遂げるための基本宣言と、行動計画が採択されました。今回の第2フェーズでは、ジュネーブ基本宣言と行動計画の具体的な実施方策とその体制に加えて、前回先送りとなったインターネットガバナンスなどの課題が検討され、「チュニスサミット文書」が採択される予定です。
WSISに関するより詳しい説明はJCAFEに、また、少し難しい話や交渉は浜田代表のサイトに譲ることにしましょう。また、原田先生はいずれ企画されるであろうJCAFEの報告会で、ご担当のCultural diversity caucusに関するタフ・ネゴシエーションの顛末をご解説してくださると思います。私はこの場を通して、実際に会場で渦巻く感覚、皮膚感覚のようなものをお届けすることで、JCAFEの責務の1つである情報社会に関する情報共有の一助にしたいと思っています。
■チュニスはWSIS一色!パラレルイベントなども開催
さて、本会議場では、9月のジュネーブで終わらなかった準備会合が続いています。が、座席が決まっているので、会議場に入れない私達は蚊帳の外です(そのわりには自由に出入りしている人もいて、結構あいまいみたいですが)。"Kram Palexpo"は東京ビッグサイトのような会場で、そこを仕切りと天井で覆って本会議場と、様々なパラレルイベントを併催する部屋、ブースなどを設営しています。
私も"Media Justice Now"主催のパラレルイベント(左写真)のひとつに参加してきました。最後に「Media Justice!」とチャントを掛け合う、とてもフレンドリーで積極的なミーティングでした。詳細な報告は後日行いたいと思います。
現地では、まだすべての会場が完成していません。会場では、関係者が難しそうな話をしている隣で、チュニジアの大工さんらしき人がトンカンとマイペースに作業を続けていて、本当に間に合うのかとこっちが心配になります。入場のための厳しいセキュリティチェックゲートがあるのですが、そこから会場に向かう通路も途中で切れいて、外で遊んでいる現地の子供がひょいっと柵を越えてきそうです。今回のサミットのホスト、チュニジアの人たちは、しっかり仕事をする一方で、結構おおらかなところがあるようで、国連のサミットにしてこの状況。ある種のギャップに驚かされます。
それでも、チュニスはサミット一色です。一番驚いたのが、10個ぐらいある空港の入国審査カウンターの半分以上が、WSIS関係者専用になっているところでした。冒頭の写真のように、町中に「Tunis hote de SMSI」(Tunis host city of WSIS)のポスターが張られているだけでなく、現地のテレビのトップニュースはすべてWSIS関係、かつCMもWSISスポンサーのTunisie Telecomのもの(しかもWSISバージョン)ばかりで、町中がWSISを歓迎している雰囲気とを出そうとしています。また、同時に、WSISのポスターやICT促進のビラも、あちこちに張られています。ここチュニスでも、「輝ける未来のために、ICTをやるのだ!」という国の意思を、明確に感じることができます。
一方で、泊っている安宿に行くために一本路地を入ると、まったく違う感覚を得ることができます。宿の主人は少し英語が話せるのですが、サミットが開催されていることは知っていても、その内容は良く知らないそうです。それでも、「チュニス中の宿が満室だ」ととてもうれしそうでした。食堂のおばさんはフランス語しか話せないのですが、サミットを知らないようでした。それでもいつもより忙しいらしく、笑顔で5ディナール(日本円で450円ぐらい)の大盛りクスクス(現地マグレブ地域の名料理)をサーブしていました。道を間違えて警備の警察に怒られているシャトルバスの運転手も、辻々に立たされているサブマシンガンつきの兵隊も、なんとなくみんな、うれしそうな雰囲気です。
WSISは情報社会の今後をまさに規定しつつある、重要かつ深刻な場です。それでも一歩外を出ると、「いつもよりお客の多い日常」でしかありません。会議で話されている内容と、セキュリティゾーンの外の日常のとギャップには、大げさではなくめまいを覚えそうな気がします。宿の主人も食堂のおばさんにも、道々に立たされている兵隊さんにとってさえ、WSISはまったく彼らの情報化と関係のない形ではじまり、そして終わるのでしょうか。
■現実社会とのギャップに見るデジタルディバイドの実像
ご承知のとおり、 チュニジアはいわゆる「発展途上国」であり、そういった国にありがちの官製独裁国家だといえるでしょう。パソコンに夢を託すようなWSISのポスターの横には多くの場合、現大統領の写真(右写真)も掲載されており、お決まりの「経済活性化と政権高揚」の同居もあります。
それにしても、会議をホストする側も、される側も、大統領も、そして市井の市民も皆が、違和感を感じないままにWSISが開催に向かっているように見えるのは不思議な感覚です。大統領の、誠実さを装った不自然なポーズ同様、あまりにそのギャップが露骨すぎて、逆に違和感がないように感じるのかもしれません。
現実にチュニジアの市民の大半が生活しているのは、ICTはおろか、見ているテレビに走査線がいっぱい入るような世界ですが、それでも、貧困から抜け出し、経済発展に必死の政府と、日々の食い扶持のためにその祭りに付き合う市民とは、動機や論理は異なっているとはいえ、WSISと情報社会を歓迎しています。
WSISはあいかわらず「会議は踊る」のようです。でも、たとえ今回すでに危惧されているように、WSISが画期的な成果をもたらすことができなくても、もうすでにひとつ、重要な意味をチュニジアの人々に、そして参加者である私達にもたらすことに成功しています。それは、「お客としてお金を落とす」だけではありません。単に「途上国で開催する」という事実だけで、WSISは、デジタルディバイド、そして南北問題を確実に証明しているのですから。 そして、これらのギャップこそが、デジタルディバイドの実像であり、WSISがもっとも試されているところなのではないでしょうか。
このように、さまざまな問題を内外に抱えつつ、WSISは最後のプロセスに入りました。そのようなWSISは、私たちに何をもたらすのでしょうか。そして、そこで私たち市民は何ができるのでしょうか。この短期連載が、そうした問題をみなさんとともに考える一助やきっかけになれば幸いです(つづく)。
(柴田邦臣/大妻女子大学社会情報学部、ViVa!コンテンツサポーター、写真も)。
<短期連載>WSIS Tunis現地レポート <第1回> <第2回> <第3回> <第4回> <第5回>
<関連HP>
■国内のサイト
・市民コンピュータコミュニケーション研究会
・障害保健福祉研究情報システム
・国連のサイト
・総務省
■海外のサイト
・世界情報社会サミット公式ページ(英語)
・進歩的コミュニケーション協会(APC)「市民社会と情報社会サミット」
・World Summit on Information Society
・World Wide Volunteer