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企業の社会貢献への取り組みが各所で話題になっている。2002年12月22日に東京・池袋 の立教大学で開催された公開講座「企業評価の新しいモノサシ―戦略的社会貢献 とは」から、斎藤槙(さいとう・まき)さんのお話を紹介する。
■社会責任を果たすと株価も伸びる?
景気低迷が続き、企業経営も厳しくなっている昨今、リストラが進むのはもちろん、企業の社会貢献に対する支出も厳しくなっている。そうした中で、ともすれば真っ先に削減対象になりえる企業の社会貢献活動を、逆に「武器」として利用できる時代が来ているという視点の講座「企業評価の新しいモノサシ―戦略的社会貢献とは」が、12月22日に開講され、あいにくの雨の中、多数の参加者を集めた。
講師は、http://www.asuinternational.com/代表で、 社会責任コンサルタントの斎藤槙(まき)さん。大手広告代理店勤務後、NY・コロンビア大で修士を取得し、現在米国で社会責任コンサルタントとして活躍している女性起業家だ。
斎藤さんの同名の著書のタイトルを冠したこの講座は、「企業評価のモノサシ」についての話からはじまった。従来の財務諸表からの評価と社会責任をポイントとした格付けの紹介があり、社会責任を果たしているという評価の高い企業は株価動向も伸びる傾向があることが、社会・環境にやさしい企業のインデックスである「ドミニ400」と、大企業中心の経済「インデックスS&P500」の比較で紹介された。
ただ、ドミニ400の企業は、S&P500の中の企業から半分以上選出されているとのことであり、中小企業についてどう反映させていくのかが課題であろう。
メジャーになってきた感もある「社会責任」ではあるが、その考え方と収益の関係が証拠付けられていないことや、統一定義がないことが課題で、それらの解決のためにまずは共通の物差しが必要とであると、斎藤さんも話していた。
■戦略的社会貢献・・社会還元から「社会投資」へ
次に、「戦略的社会貢献」についての話に入った。戦略的社会貢献とは、与えるのみの「社会還元」であった社会貢献と違い、ギブアンドテイクの「社会投資」を狙う社会貢献の新しい形であると言う。事例として、ドメスティックバイオレンス問題に取り組むリズ・クレイボーンや、NPOとコラボレーションするティンバーランド社、「アフリカでの1日プロジェクト」を行うオリンパスとファイザーが紹介された。
なかでも印象的だったのは「アフリカでの1日プロジェクト」。アフリカの姿をプロカメラマンに撮ってもらい、写真展や写真集出版などを行う取り組みは、一見「戦略的」に見えない。しかし、実は、エイズ予防薬をPRして市場拡大を狙うファイザーと、100人のカメラマンにカメラを渡して撮影、展示・出版することで「プロ」に自社カメラの優秀さを知ってもらいたいオリンパスの思惑が一致したから実現したとのこと。
なるほど・・と納得すると同時に、本業を延ばして社会貢献につなげていく循環をめざすことが、企業にとって持続可能な社会貢献のあり方かもしれない、と思った。ちなみにこのプロジェクトは、日本でもアフリカ年の今年6-7月に東京都写真美術館で紹介される。
■ボランティアでも企業でもない企業体
斎藤さんは、次に、自分の信じる価値観にしたがって行動をおこし、ビジネスを通じて社会を変えていく社会企業家の可能性について話した。ボランティアではなく、かと言って利益追求型の企業でもない事業体のあり方。アイスクリーム販売業のベン&ジェリーズ社は、その典型として知られている。
同社は、コンセプトに社会に貢献することを挙げていて、慈善事業や環境保護など社会の中で役立つことを実行している。例えば、アイスクリームはホルモン注射をしていない牛から絞ったミルクで作る。NPOのイベントには自社のアイスクリームを無償で提供する--などだ。
創業者のベン氏のビジネスモデルは、「価値主導ビジネス」。わかりやすく言うと「己の欲するところを人に施せ」で、当たり前のことのように思えるがそれをビジネスとして実践しているところがすごい。
■社会貢献の第一歩を踏み出そう
一方で、アメリカでは、9/11の惨事が、NPOやボランティアセクターにも影響を与えたと言う。以前は、社会で自己実現を目指す若者の多くがMBAを取得して大企業に勤める道を選択するのがパターンだったが、9/11以降、NPOや外交官として働く道を選ぶ人々が増加しているそうだ。個人として社会に何ができるのか?を真剣に考える人が多くなり、その場としてNPOなどを選ぶ人が増えているのではないか、と言う言葉が印象的だった。
最後に斎藤さんが強調して紹介したのが、社会貢献をしている企業の商品を買おうという”Responsible Shopper”の動きだ。消費者自身が、CMのイメージなどだけではなく、企業の社会貢献度を基準に買い物をする。斎藤さんがSRIなど企業の社会貢献のあり方を考えるきっかけになったCEPはその先駆けで、“Shopping for a betterworld”を長年発行していたが、9/11をきっかけに寄付やボランティア支援が被害者支援や消防活動などに集中し、地道な活動を続けていたNPOは経済的に苦境に立ち、CEPも解散の憂き目に会った。
しかし、CEPのノウハウと、『「買い物」という武器で「環境」「安全」「労働環境」のために闘う』マインドは引き継がれている。
買い物や投資など、小さいことでも日常生活の中で社会に対してできることはたくさんある。企業活動を通じて社会貢献をすることももちろんだが、まず、自分に何ができるかを考えて行動することが、社会貢献の最初の一歩であろう。
(野口朋子・フリーライター)
本文に登場した主な企業等のURL
リズ・クレイボーン社
*本講座は立教大学大学院21世紀社会デザイン研究科とNPO法人21世紀コープ研究センターとの共催で開催中の連続公開セミナー「21世紀社会デザイン研究の見取図」の1講座として開催された。